海の上で流木のようにポカリ、ポカリと波間に浮いて昼寝を始めた花子はいつしか夢を見ていました。
 花子は暗い巣穴の中で他の仲間達と砂の中から這い出そうともがいていました。となりにはのぞみちゃんもいます。
「花ちゃんがんばろうね」
のぞみちゃんが声をかけます。
「のぞみちゃんもがんばろうね」
お互いに声をかけあいながら少しずつはい上がっていきました。砂が花子達に重くのしかかってきます。砂の中は真っ暗で何も見えませんでした。でも子ガメ達はがんばって少しずつ上に上がっていきました。
 そして、天井からやわらかい光が花子達の目に入ってきました。砂の中から出るのはもう少しです。
「のぞみちゃん。今夜あたり出られそうね」
「そうだね。出られたら海に帰れるんだね」
花子達は外の世界がどうなっているのかワクワクしていました。
 ザクザクと遠くで何か音が聞こえてきます。花子達の方へ向かってきました。音は振動音となって響き大きく耳のなかに入ってきました。そして、砂の上から大きな力が花子達を圧迫してきま
した。ものすごい重さで
す。体がつぶれそうです。
身うごきがとれませんで
した。
 大勢の人達がウミガメ
の産卵を見に来て花子達
を踏みつけたのでした。
「ウーン、ウーン」
花子はもがこうとします
が動けません。
 夢から目が覚めた花子
は網にからまってもがい
ていました。絶体絶命で
す。
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うみがめ花子



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その33