いくらもがいて網から逃れようとしても網に絡まっていてはどうしようもありませんでした。息ができなくなり、海水を飲み、呼吸が苦しくなってきました。『ドドドドー』と船のエンジンの音が聞こえてきました。花子は気が遠くなり、ぐったりしていました。このまま死んでしまうのでしょうか・・・?
「ヨイショ!」「ヨイショ!」
漁師の人達が網を船に引き上げています。網にはエビや魚がいっぱい入っていました。今日はいつもよりエビや魚が多いのか漁師の人達は笑顔でした。網を引く腕にも力がこもっていました。
「おお!ウミガメが入っているぞ!」
船の先で網を引き上げている漁師が叫びました。
 港に帰った漁師の人達は今日の漁で獲った魚などを網から外してかごの中に入れていました。ウミガメが1匹うつぶせになってかごの脇に置いてありました。今日、網にかかったウミガメは1匹だけです。
 目は閉じ、口からは海水が出て、ぐったりとし、死んでいるようでした。そのウミガメは花子でした。かすかに心臓は動いていました。
「ウミガメはオラがもらっていくから皆食べに来いや!」
一人の漁師が花子を抱えました。そのとき海水を吐き出し、花子は息を吹き返しました。
 うっすらと周りを見ると人ばかりです。海の中ではありませんでした。
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うみがめ花子



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その34