漁師は花子を腰にかかえて、市場の中を歩いています。花子は揺られるたびに海水を吐き出しました。胃の中の海水をすべて吐き出すと花子は元気になり、肢をばたつかせました。バシャ!バシャ!漁師の腕を思い切りはたきました。しかし、腕っぷしが強い漁師はそれくらいでは離しませんでした。おまけにここは陸の上です。漁師が花子を離したとしてもどうにもならなかったのでした。絶体絶命の花子です。それでも花子はバシャ!バシャ!と漁師の腕をはたき続けました。
 ビリーさんはカリフォルニアに来て、ウミガメの研究をしているアメリカの人です。同じく研究仲間のトムさんと時々市場に来て、生きたウミガメが捕まっていないか見て回っています。これまでビリーさんは花子と同じ仲間のアカウミガメをたくさん見つけ、標識をつけて放してきました。
 この日も市場に出かけ、生きたウミガメが捕まっていないか探していました。すると、漁師の腕の中で暴れ続けているアカウミガメを見つけました。
「トムさん!あそこ!」
二人はすばやく漁師のところにかけて行きました。
 花子が「助けて!」と叫んでもここは陸の上、花子の目からは塩分の濃い涙が止まることなく出ていました。
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うみがめ花子



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その35