「西へ行こう!」
誰かが言いました。
「西だ!」
「西へ行こう!」
あちこちから声があがりました。花子も西へ行きたくなってきました。だんだん鼓動が高まってきました。旅をするのに十分な栄養を取り、立派な体つきになっていた花子達は意気揚々としていました。
「私、行くわ!」
花子は西の方へ向かって泳ぎだしました。初めはゆっくりと、ゆっくりと泳ぎました。行く先は分かりません。しかし、強く引かれている感じでした。後から花子の仲間達も続いてきました。丁度西に向かう潮に乗り、潮まかせの旅でした。マグロが群れをなし、海面を泳いでいる花子達の下を猛スピードで泳いでいきました。
 何ヶ月も過ぎたある日、遠いかなたに島がいくつか見えてきました。島に近づくにつれ海の底が見え始め、やがてサンゴ礁が島を覆いつくしている場所に着きました。サンゴ礁には華やかな色をした魚やエビ、貝やウニなどがいっぱいいました。花子に一匹のスズメダイが近づいて来ました。
「あなた達見ない顔だわね、どこから来たの?」
「私、アカウミガメの花子よ。遠い、遠いメキシコから来たのよ。これから西の方へ行くの。でも、長い旅で疲れているからしばらくはここにいようと思っているの・・・」
「ここはパラダイスよ!私、まりえって言うの!」
スズメダイは言いました。他にブダイ、ベラ、フグなどの魚が集まってきました。
「ここはいいところみたいね、なんと言うところかしら」
「ここはハワイというのよ」
まりえは答えました。旅の疲れを取るにはいいところのようでした。
 しかし、事件はどこにいてもおきるものです。花子達に陰が忍び寄ってきました。
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うみがめ花子



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その38