マッコウクジラの家族と西に向かいながら、何ヶ月も過ぎたある日のことです。マッコウクジラのお母さんの、としこの背中に乗っていた花子は、はるかかなたにおぼろげに大きな島影を見つけました。その島影を見た花子は非常に懐かしさがこみ上げてきました。
「早く来い!」
と呼んでいるようでした。花子はマッコウクジラの背中で、背伸びをするようにして島影を見ながら叫びました。
「のぞみちゃーん!あそこの大きな島、私の記憶の奥にあるようだわ・・・」
のぞみちゃんも花子の横にはいあがって島影を見ました。
「花ちゃん、なにかひきつけられるような気がするわ・・・。さとるちゃん、どうもない?」
それまで、花子達の遊びを無視していた、さとるも花子とのぞみちゃんのそばにはい上がってきました。
「む~ん!そういえば何か・・・。そうだ!生まれ故郷に帰ってきたかもしれない」
 さとるのその言葉で、花子達は心の中の緊張がほぐれるようでした。
「花子ちゃん、良かったネ!故郷はもうすぐじゃない」
マッコウクジラのお母さんのとしこは目を細め優しく花子に話しかけました。島影がだんだん大きくなってきました。そして、ついに懐かしい匂いのする黒潮に到達しました。この匂いは、生まれたばかりの花子達を大回遊の旅に連れて行った黒潮の匂いだったのです。ついに、故郷の日本に花子達は着いたのでした。
「花ちゃん、良かったネ!私達はこれから南の方へ向かっていくの。ここでお別れだネ。また、ここを通ることもあるから、会えるかもしれないネ」
マッコウクジラのお母さんのとしこは花子に別れの言葉を言いました。
「さようなら、元気でネ!」
 マッコウクジラの家族は花子達に大きなジャンプを何度もしてみせて南の方へ別れていきました。花子達はマッコウクジラが噴き出す潮が見えなくなるまで、いつまでもいつまでも見送っていました。
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その43