花子達が着いた所は日本でした。でも、到着した場所は花子達が生まれた場所ではありませんでした。確かになつかしい海の臭いはしました。でも、何かが違っていました。
 「さとるちゃん、私達が生まれたところではないみたいだね?」
花子はさとるに話しかけました。
「ウ~ン・・・」
と言ったままさとるは黙り込んでしまいました。  
「とにかく、日本というところへ着いたのだから、この先はここで生きていかなければならないの。みんな別々に生活していかなければならないのよ」
とのぞみちゃんは言いました。花子は生まれ故郷の海へ行くのは少し早いような気持ちがしました。
「それにしてもこの海の臭いはなつかしいね。でも、私達が生まれたところはここではないけど、日本で生活して行かねばならないのはまちがいない。でも、ここは・・・」
とさとるが話しかけたところで、
「われわれは群れで生きていくことができないから、ここで別れて別々に生きていったらいいじゃない。いつかは顔を合わせることもあるかも・・・」
そばで聞いていたクマが言いました。クマは4年ぶりにハワイで再会し、一緒に過ごしてきました。
「そうね、みんな好きなところへいったらいいじゃない。私は南へ行くわ・・・」
花子はみんなに言いました。
 集まったアカウミガメ数百匹、日本の海での岩礁会議、最初で最後かもしれません。ここは日本の真ん中あたり、興奮している花子達は暗くなるまで、ワイワイ、ガヤガヤしていました。
 花子は、今夜はここの岩場で寝て、明日、黒潮に逆らって南に下りていくことにしました。
 花子を待っているところは別にあるかもしれませんでした。そこで体力をたくわえ、何年かかるか分かりませんが、生まれた浜へ行かなければなりませんでした。花子は岩礁に裂け目を見つけ、そこに体を潜り込ませました。今夜は良い夢を見そうです・・・。
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うみがめ花子



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その44