花子達はあちこち仕掛けられていた定置網 を避けながら南のほうへ下っていきました。長い長い浜が見えました。でも、その浜は懐かしさが沸いてきませんでした。
 そこは宮崎の海岸でした。ちょっと黒っぽい砂浜で、あちこちに護岸ができていました。生まれたとき、黒潮に乗って北へ行くときに見た砂浜は、砂が少なくなっているようでした。花子達の生まれた砂浜は大丈夫でしょうか…?
 花子達は宮崎の都井岬の沖をゆっくり泳ぎながら鹿児島の佐多岬の沖に来ました。「さとちゃん。何か懐かしい匂いがしない…?」
花子はそばを泳いでいるさとるに話しかけました。
「う~ん。そう言われればそのような匂いが…」
いつものさとるです。天気が良いのに波が少しありました。
「私達が行くところは近いような気がするわ…」
花子はさとるには言わないで、花子の横で泳いでいるあゆみに言いました。あゆみは日本に着いたときから花子の近くにいるのですが、あまり花子とは話をしたことがありませんでした。
「そうだネ、なにか私達がたどり着くところの海は近いみたい」
とあゆみはそっけなく言いました。
 その時です。ゴ~と音を響かせ、ものすごい勢いで船が通って行ったのです。大きな波が花子達を襲ってきました。みんなびっくりして海に深く潜ったり、波でひっくり返ったりしました。
「何だ~、あんな早く泳ぐものは見たこともない」
 それは時速80キロで走る高速船だったのです。花子達にとって、高速船は怪物でした。他にも貨物船や客船がいっぱい通っていました。大隈海峡は花子達にとって気が抜けない海でした。
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その47