東シナ海で過ごすようになってから、何度目かの春がすぐ傍に近づいてきました。「体が何処かに行きたがっているようだわ」
花子は美味しいカニを食べながらそう思いました。
 花子の体は甲羅の大きさも90センチメートルくらいになり、まるまると太っていました。花子は故郷のいなか浜へ行こうと思いました。そう思ったらいてもたってもいられずに、いなか浜の方へ向って泳ぎだしました。季節は早春、水温は21度、3月の初め頃でした。
 永田の灯台に近づいた時です。仲間達の姿が数匹見えました。そばに寄ってみると懐かしい顔が見えました。
「アッ!のぞみちゃんだ。さとるさんもいる」
さらに、熊ちゃんもいました。のぞみちゃんもふっくらし、さとるちゃんと熊ちゃんは長い尾を見せびらかすようにゆうゆうと泳いでいました。花子はたくましくなったさとるや熊を頼もしく思いました。
「みんな変わったわね。花子ちゃんも女らしくなって」
「そういうのぞみちゃんも女らしいわよ」
永田の灯台の岸辺は花子の仲間達がいつしかいっぱい集まっていました。
 それから1ヶ月、花子はさとると恋をし、花子のお腹の中には卵がいっぱい入っていました。いよいよ卵を産みにいなか浜へ上陸するのです。花子達は沖合で浜を見ました。浜が痩せたような気がします。
「さとちゃん。行ってくるわ」
花子は真っ暗な浜へ上陸をしようと波打ち際にきました。空は落ちてきそうな満天の星空でした・・・。
 
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うみがめ花子



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その50