花子はどうすることもできませんでした。卵を産むのを途中で止めることは出来ません。もうすぐ産卵が終るはずです。ポトポトとまた2個産みました。
「ザク!ザク!」
その足音は花子に近づいてきました。そして花子の真後ろで
「フー!」
と大きな息をしました。そして目の前の花子に気付いたのか、花子を避け、右横を
「ザク!ザク!」
と足音をさせながら通り過ごそうとしました。なんと!その足音の主はのぞみちゃんでした。
「あっ!花ちゃん、もう卵を産んでるの?私は今からなの。この辺にいい場所はないかしら。私、お腹が張ってるの」
と、のぞみちゃんが花子に声をかけて通り過ぎようとしたとき、
「フ~」
と花子がおおきな息をしたかと思うとポトポトポトと最後の卵がお腹から3個出てきました。
「ア~!すっきりした」
花子は涙をいっぱい出しながらのぞみちゃんに
「そこの先がいいわ。砂が細かめで穴を掘りやすいわ。初めてでどうなるかと思ったけど力まずにいたら大丈夫よ」
と返しました。でも疲れがどっとわいてきました。
「ありがとう。私、卵が出そうなの、後で話しをしましょう」
のぞみちゃんは早々に花子より2mほど上で穴掘りを始めました。花子は後肢で卵を埋め、更にカモフラージュしながら、少しずつ前に進みました。近くには3頭のアカウミガメが上陸していました。
 30分ぐらい砂をかけ、卵を産んだ場所が分からないようにして、さとるが待っている静かな海に帰っていきました。子孫を残す大きな仕事の始まりでした。

 
 
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その52