東シナ海の海は荒れます。北西の風は強く吹き、波は時として5mを超え、荒れ狂う日もあります。その日はまさにそんな日でした。花子はどうしているのでしょうか・・・?
 花子とさとるはトカラ列島の岩礁地帯の底で嵐が静まるのをじっと待っていました。
 荒れ狂う波の振動が20mの海底まで伝わってきました。
 水温は18度、花子たちにとっては耐えきれない水温ではありませんでした。
 「さとちゃん、この嵐はいつまで続くのかしら」
 そばで目を閉じてじっとしているさとるに話しかけました。
 「ウ~ン、もう3日も続いているからもうすぐおさまるのでは・・・」
 花子とさとるの間で、背ビレと胸ビレをゆらつかせているミノカサゴのミノルも口を出しました。
 「そうだね、もうすぐおさまるかも・・・」
 花子たちの周りにはいろいろな種類の魚たちが嵐がおさまるのを待っています。
 「ミノルちゃん、何かして遊ぼうか・・・?」
 花子はミノルに声をかけました。じっとしているのは退屈です。
 「でも、体がゆれているから、気分が悪くなりそう。このままじっとしているよ」
 ミノルはそう答え、岩礁の奥に入り込んでいきました。
 東シナ海の冬、皆なかよく寄り添って嵐を避けていました。花子は息継ぎのため海上に顔を出しました。大波のために身体は宙返りをしましたがそこは慣れたもので、サッと一息し、元いた場所に潜って行きました。東の空が明るくなってきているのを、ちらっと花子は確認しました。もうすぐ嵐がおさまる前ぶれです。
 
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その55