あおいあおい海の彼方から、海底の岩場で休んでいた花子に向かって大きなウミガメがゆうゆうと泳いでやってきました。それは体の割に顔が小さく、肢が長くて目がきりっと引きしまった顔のアオウミガメでした。でも、その顔に見覚えのあるような・・・。
「あっ!ありえちゃん・・・?」
花子は自信がなさそうな声でそうたずねました。
「・・・?もしかして‥・花ちゃん・・・?」
アオウミガメは懐かしそうにいいました。
 2人は抱き合って喜びを表しました。他から見ているとアオウミガメとアカウミガメが取っ組み合いの喧嘩をしているように見えました。
 その年の産卵を終えた花子は東シナ海の大陸棚のいつもの場所で、さとると仲良く美味しいカニをお腹いっぱい食べていました。
 月日は流れ、いつしかさとるもいなくなりました。花子の甲羅にはフジツボがいっぱい着き、穴ぼこもありました。その穴ぼこには小さな生き物が住んでいました。
 そして、何十年かたったある日、花子は大きな流木を見つけました。
「よいしょ!」
 花子は流木に体を半分預けました。その流木はカメ木になりました。カメ木は波まかせ、風まかせであっち行ったり、こっち行ったりで、東シナ海をプカプカ浮いていました。
 花子は100年も生きているのでしょうか…?それとも、もっと生きてきたのでしょうか?花子の子供たちは何万匹も巣立って行き、孫やひ孫まででき、とても幸せでした。花子の周りにあでやかな魚たちが泳ぎ回っていました…。 おしまい

 
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うみがめ花子



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その57