親ウミガメ

遠く外洋から訪れるウミガメたちは、産卵場の沖で交尾して、夜になるとメスだけが産卵のために砂浜に上陸します。
地域によって異なりますが、屋久島での産卵は4月末から7月末まで続き、同じウミガメが1シーズンに平均3回産卵します。

2017年PITタグ購入にご協力いただいた皆様へ
↑ウミガメ里親番号及び2017年の上陸・産卵状況はこちらです↑

生態調査

当館の生態調査では、家畜(ブタ)用の標識として用いられているマルチフレックスP型タグをウミガメの左後肢と右後肢(2013年まで左後肢と左前肢)に装着し、左前肢にPITタグを体内に挿入しています。さらに、甲羅の大きさ、特徴を記録します。
 標識(タグ)は個体識別や回遊ルート、そして回帰年数や寿命など、生態調査を行うために必要です。標識調査により、屋久島で産卵したアカウミガメは、1個体が1シーズンに平均3回(1~6回)産卵することや、2~3年おきに産卵に戻って来ること、また、ほとんどのアカウミガメが東シナ海を回遊していることなどが分かりました。最も遠くまで回遊したアカウミガメはフィリピンで2個体確認され、その内1個体は次の年に永田地区の浜に戻ってきました。
 標識調査を継続して行う目的で、当館では、親ガメの里親になっていただき、PITタグ購入にご協力いただける皆様を募集しております(→屋久島のウミガメの里親になりませんか?)。

PITタグ装着数

装着数
2005558
2006278
2007295
2008806
2009745
2010942
2011889
20121062
2013966
2014665
2015356
2016431
2017437
合計8430

産卵行動

産卵場所は波打ち際から30mほどの浜の上部で、満潮時でも卵が海水につからない場所を選んで行います。産卵行動所要時間は海水温が高くなるほど短くなります。

上陸(5~10分)
上陸(5~10分)

上陸(5~10分)

産卵のために上陸するウミガメは、昼の内は産卵場所近くの沿岸や岩礁帯で休み、暗くなるのを待って上陸してきます。非常に警戒心が強く安全を確かめてから砂浜に上陸します。

穴掘り(20~30分)
穴掘り(20~30分)

穴掘り(20~30分)

産卵場所が決まると前後の肢を使って体が深く沈むくらい砂をかき分け、さらに後肢でアカウミガメは直径20cmほど、深さ60cmほどの巣穴を掘ります。アオウミガメは肢が長いのでさらに10cmほど深く掘ります。

産卵(10~30分)
産卵(10~30分)

産卵(10~30分)

巣穴の端に後肢をかけ約10秒おきに2~3個の卵を産みます。1回の平均卵数は115個。最も多く産卵したアカウミガメは188個で、大きい個体ほど多くの卵を産みます。通常、卵が出てくるところは体で隠れて見ることはできません。

穴埋め(30~40分)
穴埋め(30~40分)

穴埋め(30~40分)

産卵後、後肢で丁寧に巣穴を埋めます。時々体を持ち上げて、巣穴の上をドンドンと押さえつけて巣穴を固めます。その後、前肢で砂を後方に飛ばしながら進み、巣穴がどこか分からないようにカモフラージュします。

帰海(5~10分)
帰海(5~10分)

帰海(5~10分)

カモフラージュを終えたウミガメは、まっすぐ海へ帰ります。そして再び産卵のために上陸してきます。その間の日数は8~18日で、ほとんど何も食べず沖合の岩礁帯などで休み、次の産卵に備えます。

産卵後の回遊調査

標識をつけて放流したウミガメが再捕(獲されること)されることにより、そのウミガメがどの海域を回遊しているかが推定できます。しかし、ウミガメがどのように回遊しているか回遊経路は分かりませんでした。
 屋久島で産卵を終えたアカウミガメがどこを回遊し、どのくらいの海水温のところを潜水しているのかを調べるため、当館では、1994~1998年にかけて水産庁の委託を受け、産卵終了後のメスのアカウミガメに、人工衛星により回遊経路を追跡する送信機を、潜水生態や生育している場所の海水温を連続して長期間計測し、記録できるロガー(水深・水温記録計)を装着して放流しました。
 屋久島から放流した計25頭の内、19頭が東シナ海へ、4頭が太平洋を回遊し、残り2頭はデータがとれませんでした。
 この様に、産卵後のアカウミガメの回遊経路は様々ですが、屋久島のアカウミガメは、大半が東シナ海へ移動し、索餌回遊(餌を探すために回遊すること)をしていると考えられます。

2017年PITタグ購入にご協力いただいた皆様へ

2017年度にお申し込みのあったPITタグは、5月に上陸・産卵したアカウミガメ♀に装着しました。2017年度の上陸・産卵状況は以下の通りです。

(受付No.)17-01~17-13

受付
No.
PITタグ 大きさ(cm) 上陸状況
No. 装着日 甲長 甲幅 日付 場所 確認
17-01 392145000214507 2017/5/8 89.4 69.4 5/8 いなか浜 産卵
5/26 いなか浜 戻り
5/28 いなか浜 産卵
7/7 いなか浜 産卵

※ この個体は、全ていなか浜へ上陸しました。

17-02 392145000213466 2017/5/9 87.5 71.2 5/9 いなか浜 産卵
5/26 前浜 産卵
6/7 いなか浜 産卵
6/19 いなか浜 産卵

17-03 392145000292401 2017/5/11 84.0 65.5 5/11 いなか浜 産卵
5/27 いなか浜 産卵
6/11 いなか浜 産卵
6/22 いなか浜 戻り
7/3 いなか浜 産卵

※ この個体は、全ていなか浜へ上陸しました。

17-04 392145000293892 2017/5/11 88.8 69.0 5/11 いなか浜 産卵
5/26 いなか浜 産卵

※ この個体は、全ていなか浜へ上陸しました。

17-05 392145000291076 2017/5/11 83.0 63.4 5/11 いなか浜 産卵
5/27 いなか浜 産卵
6/10 いなか浜 産卵
6/25 いなか浜 産卵
7/7 いなか浜 戻り
7/8 いなか浜 戻り
7/8 いなか浜 産卵

※ この個体は、全ていなか浜へ上陸しました。

17-06 392145000310486 2017/5/11 82.0 64.6 5/11 いなか浜 産卵
5/26 前浜 戻り
6/9 いなか浜 産卵
6/21 いなか浜 戻り
6/22 いなか浜 戻り

※ この個体は、全ていなか浜へ上陸しました。

17-07 392145000293378 2017/5/14 80.0 65.5 5/14 いなか浜 産卵
5/27 いなか浜 戻り
6/11 前浜 戻り
6/11 前浜 産卵
7/6 前浜 産卵

※ この個体は、いなかA地区の砂が流出した土手にぶつかり帰海中、岩場にはまっていたところを救出しました(5/28)。

17-08 392145000274438 2017/5/15 91.9 71.7 5/15 いなか浜 産卵

※ この個体は、大型の個体にも係わらず1回の産卵しか確認できなかったが、2018年は前浜の調査ができない日が多く、前浜かその他の浜へ上陸した可能性があります。

17-09 392145000311110 2017/5/15 84.9 65.8 5/15 いなか浜 産卵
5/29 いなか浜 産卵

※ この個体は、全ていなか浜へ上陸・産卵しました。

17-10 392145000289956 2017/5/15 98.0 74.6 5/15 いなか浜 産卵
5/30 いなか浜 産卵
6/26 いなか浜 産卵
7/8 いなか浜 産卵

※ 2011年から2年毎に回帰している個体で、2011年から甲長が4.8cm大きくなり、甲幅はほとんど変わらず、全ていなか浜へ上陸・産卵しました。1m近い大型のウミガメで、前浜かその他の浜へ上陸した可能性があります。

17-11 392145000300498 2017/5/14 82.6 63.0 5/14 前浜 戻り
5/15 前浜 戻り
5/15 前浜 戻り
5/17 いなか浜 産卵
6/3 いなか浜 戻り
6/4 前浜 戻り
6/7 前浜 戻り
6/9 いなか浜 戻り
6/12 いなか浜 産卵
7/1 いなか浜 産卵

※ この個体は、左前肢を全欠損し、TAG取れあと(両後肢)が確認された回帰年不明個体で新しく登録しました。

17-12 392145000308976 2017/5/16 79.6 64.5 5/16 いなか浜 産卵
6/11 前浜 戻り
6/12 いなか浜 戻り
6/13 いなか浜 産卵
6/26 いなか浜 産卵

17-13 392145000273240 2017/5/16 77.7 60.6 5/16 前浜 産卵
6/29 いなか浜 産卵

※ この個体は、TAG取れあと(左後肢)が確認された回帰年不明個体で新しく登録しました。